社長挨拶
サーフィンという偉大なカルチャーを通して、皆さんの人生を豊かにしたい・・・
皆様こんにちは。XTR/Hydro Flex For Japanを運営するO`Side Surfの栗田祐紀と申します。
私はカリフォルニアに長年住んでいた経験を活かし、日本の皆様にサーフィン・サーフカルチャーの本場であるカリフォルニアメイドのサーフボードを提供するためにこの会社を立ち上げました。
サーフィンは、海から恩恵を与えてもらっている偉大なカルチャーです。その自然・海・スポーツを通して、皆さんのライフ(人生)を豊かにしたい、そう思ってこの会社を運営しています。
カリフォルニアでの長年のXTR/Hydro Flexファクトリーとのリレーションと、カリフォルニアでの長年の生活知識・英語力を生かし、他のお店では出来ない情報提供・サービス・商品をお客様に提供することをモットーとします。弊社の商品はこだわりを持って選び抜いたものです。そして、ある意味島国であるがゆえに、カリフォルニアの実際の情報が入りにくい日本で、曖昧さを除いた本物の情報を提供させていただきたいと思います。
そしてより良いサーフボード・サーフライフをお客様に提供できるように、常に最新・正しい情報を心がけ、シェイパー&トップライダーとお客様の架け橋になれると良いなと考えています。
サーフボードは様々なデザインがありますが、お客様の目指すスタイルにばっちりの一本が必ずあります。そのお手伝いを、プロシェイパーと一緒にお客様に提案していきます。
今世界のサーフボードマーケットは変化・進歩が著しく、そんなトレンドを日本の皆様にいち早く・正しく、そして私自身が感じたことをダイレクトにお伝えできればと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。
このページでは、XTR素材との出会いのリアルストーリーを紹介しています。Hydro Flex素材との出会いストーリーもこちらに記載しましたので、興味がある方は是非ご覧ください。
【社長プロフィール】
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*栗田祐紀 O'Side Surf/XTR・Hydro Flexサーフボードジャパン代表:サーフ暦24年。
千葉県出身・在住。
長年のカリフォルニア生活の中で、さまざまなサーフボードシェイパーらとの強いリレーションを確立。その緊密なディスカッションの中で、優れたサーフボード理論の教えを受ける。
カリフォルニアに7年間住んだ後に、日本へ帰国し現在の合同会社O'Side Surf【O'Side, LLC】の最高経営責任者兼オーナー。現在も年に3〜5回渡米し、常に最新の情報・商品を日本のお客様へ提供する。
セオリーと実践を通し、サーフスキルとサーフボードを科学してきた。その抜群の知識・経験と、世界一級のプロシェイパーとの絶え間ないコミュニケーションを生かし、常にユーザーにあらゆる角度から適正なボードモデル・サイズを提唱する。
XTRのファクトリーから、現在XTRボードの専門的なトレーニングを日本人の中で唯一受けているXTRのプロ中のプロ。また、2010年の秋から、Hydro Flexの開発者であるBufoから、Bufoボードの正規取引店として日本最初の正規Dealerとして認められる。
University of California, Berkeley 大学院卒業 法律学士・教育学/言語学修士。TOEFL CBT270点・実用英語技能検定(英検)1級保持 |
弊社の社長のXTRサーフボードストーリー |
本当に価値あるサーフボードを日本の皆様に届けたい・・・
:私が何故XTR素材の虜になったか?
XTRサーフボード
サーフィンを愛する皆さん、こんにちは。XTR/Hydro Flex For Japan代表の栗田です。ここではXTR素材についての魅力を説明します。
このサイトでは、サーフインダストリーの世界の中心である
"カリフォルニア"
でハンドメイドされる、プレミアム新素材のXTR/Hydro Flexサーフボードを取り扱っていますが、
”何故そこまでXTR/Hydro Flexサーフボード薦めるのか?”
と好奇心を持っている方もいることでしょう。
40年も前からあるPU(ポリエステル)素材を筆頭に、EPS・モールドボード・カーボンボードなどなど、現在様々なタイプの素材のボードがあります。その多彩なチョイスの中で”どうしてXTR/Hydro Flex素材?”なのでしょう。Hydro Flexとの出会いストーリーはこちらのページを参考にしていただくとして、このページではXTR素材との出会いについて紹介いたます。
私は、このXTRサーフボードプロジェクトに加わる前は、サーフィンでスポンサーされていたわけでも無く、プロサーファーでもありませんでした。いわば典型的な日本のサーフ業界にも全くかかわっていません。皆さんと同じ、サーフィンとサーフボードを愛する一般サーファーです。
でも、サーフィンが好きな一般のサーファーでしたら分かってくれると思う気持ちなのですが、
”一般サーファーだってプロと同じく、いつもサーフィンの技術を向上させたい・上手くなりたい・良い波に乗りたい、そしてサーフィンを全身で楽しみたい”
と思ってサーフィンしているのです。私もそのうちの一人でした。
だからサーフボードはブランドももちろんのことですが、その性能を大きく左右する素材ももちろん気になっていました。
日本に住んでいた頃は分からなかったけど、世界の最新デザイン&素材が集まるカリフォルニアで、様々なボードデザイン&素材を試しているうちに、
”サーフボードのデザインだけで無く、素材によって、新しいサーフィン・サーフボードの可能性が広がる”
ということを、強く思うようになったのです。一般サーファーの技術を補う素材。まるで、ゴルフクラブを作り出す素材の進化がもたらした、ゴルフレベルの向上のような現象が、サーフボードでもこれからジワジワと始まる。そんな実感をカリフォルニアでサーフィンとサーフボードに明け暮れる毎日から、抱き始めたのです。
それでは、私がXTRの虜になったリアルストーリー(実話)が始まります。
自分のサーフィン&サーフボードに対する考え方をすべて変えてくれたカリフォルニア生活7年 |
私が20代の時、とある理由があって、カリフォルニアの大学で学ぶことになり、幸運にも近くに世界的に有名なポイントブレイクがある場所に住むことが出来た。そこでは、休日になると勉学のことも忘れて、朝から晩までサーフィンに熱中した。
この留学の本当の目的はサーフィンではなかった。自分の仕事のキャリアアップのために大学院へ行き、修士課程を修了。日本では、以前やっていた仕事に戻る予定だった。でも、あのカリフォルニアの波・気候・文化・そしてサーフィンに取り付かれてしまい、当初の目的もすっかり忘れてサーフィンに没頭してしまった。自分にとって、学問やキャリアのことなんか、どうでも良くなってしまった。
日本では、18歳の時からサーフィンを始めたので、当時は遅くとも早くとも言えない。いわば普通のサーファー。学生の頃は首都圏の大学へ通っていたので、海から8分ほどの実家の千葉の海に、週末や時間のある平日に通っていた。
その後に千葉で就職。その後に先、カリフォルニアに縁あって留学・移住したのだけど、カリフォルニアは日本のサーフカルチャーとは全く違う光を放っていた。それはまさに黄金の輝き・・Golden State(黄金の週)と言われるカリフォルニアには、筆者の心を捉えて離さない魅力があったのだ。
私が住んでいた場所はいわば北カリフォルニアとも言われる場所。そこでは、冬になるとアリューシャン諸島付近で発達した低気圧からの、波長の長い大きな10ft程度の波が押し寄せる。もちろん波が2〜3ftの時もあるが、うねりがいったん入ればパワフルな波が味わえる。その場所では、PU(ポリエステル)ボードで性能を高めるために軽量にしてある4OZ×一層巻きのボードなどは、ちょっとしたきっかけですぐに折れてしまう。ある冬にはサーフボードを5本も板を折ってしまった記憶がある。
すべて自分の貯金/奨学金などで学んでいた学生だから、湯水のように出費する無駄遣いは出来ない。日本語教師のアルバイトもしていたが、十分な資金を稼ぐまでとは・・・そんな中、サーフボードの強度は大きな問題だった。
”パフォーマンスは満足行くが、プロが好んで使うPU(ポリ)の4OZの一層巻きは、耐久性の面で一般人には使えない。でも4OZ×2枚デッキ&4OZ×1枚ボトムのPUボードは重く・反応悪い。そんなノーマル仕上げのサーフボードを、波がちょっぴーだったりビックだったりする以外はプロは試合で誰も使っていない。”
サーフボードを多く触って・乗っているとわかるのだが、プロが使うボードは
”あのボードだったらパフォーマンスが高くて納得”
と言うものが多い。そのプロ仕上げボードと全く同じデザインを、一般販売用にPUで仕上げたボードもある。だけど、プロが実際使っているボードとは全く違う乗り味・感触があるのだ。はっきり言ってラックボードはあまり調子が良くない。
素材の巻き以外は全く同じデザインなのに・・・
そう考えると、サーフボードの性能は、シェイプだけで決定されるのではない。素材・そしてラミネーションで全く性能が変わるボードが出来る。
”プロ用仕上げボードは調子良いけど、スポンサーされていない自分にはボードを何本も買う余裕は全く無い”
”でもプロ用仕上げサーフボードのようなハイパフォーマンスに加え、強度のあるサーフボードが欲しい”
そんな矛盾した気持ちを強く心の底から抱くようになった。
強度があっても性能が良くないボードは乗りたくない。性能が良くても、すぐに壊れるボードだったら破産してしまう。そんなわがままな気持ち。でも一般サーファーだったら誰だって、同じように思うはずだ。
”今までのボードの概念を覆すボードが必要だ。軽く、丈夫、そしてパフォーマンス性能が高い素材・・・”
それこそ、これからのサーファーが必要な未来系サーフボード・素材だと、心の何処かで考えていた。
新しいモールドボードを使い始めてみる(2002年) |
質の高い波にも乗りたいけど、ボードは壊したくない・・・波は最高だけど、ボードを壊してしまう可能性があるので思いっきりチャージできない。そんな一般サーファーが誰でも直面するようなジレンマの中ある新素材を発見した。当時のカリフォルニアのサーフボードマーケットで、ポリエステル樹脂より性能が高く、そして強度もあるエポキシ樹脂でサーフボードを巻いた製品が登場し始めたのだ。
ひょんなことから海で見たテカテカ光った新しい素材だ。そんな印象だったモールドボードを使い始めてみた。これこそ、今もマーケットで売られているモールボードだった。モールドボードはPUボードより圧倒的にに丈夫。ほとんど壊れないし、波のサイズに合わせてセミガンタイプなどもあるので、使い始めていた頃は重宝した。丈夫さと言う点ではとても当初気に入っていて、すぐに5本もコレクションを揃えていた。
ただ、ボードに乗り込んでいるうちに、次なる障害が待ち受けていた。それは、自分が理想とするボードフィーリングが得られていないことだった。すなわち、モールドボードの乗り味と、波への対応幅の狭さだった。
モールドボードのように、丈夫さを強調するとどうしても全体を難くする必要がある。物理的に硬いボードは、ボードがフレックスして元に戻ろうとする力が強く、またボードをしならせるのには多くの力が必要だ。このフレックス特性が、オフショアでクリーンな小波のときはとても重宝するのだが、実は小波でもオンショアが強かったり、波が大きくなって水面にこぶができるような状況だと、ボードがパンパンと跳ねてしまう。
自分のスキルだけでなくサーフボードからも助けてもらわないとならない我々一般サーファー。上のような状況では、モールドボードはまるで使い物にならない。
でもオフショアでクリーンなサーフィンに理想的な状況って、サーフィンを長くしている人なら分かるが、そんなに無い。ましてや、低気圧が近づかないと、波が出にくい日本だったらなおさらである。低気圧が近いほど、風が強くなるのだから。
モールドボードの欠点は、あくまでも一般サーファーの印象だったのだが、たぶんこの感触は他のサーファーも抱いている共通事項だろう。ある程度サーフボードを乗り込んだショートーボーダーだったら、なおさらモールドボードに対する印象は筆者に近いものとなると考える。
結局そのボード素材に満足はいかず、手元に5本あったボードはすべて売ってしまうことになった。別にモールドボードは製品としては悪くないのだ。だけど、自分にはベストの選択では無かった。
だけど、初めて使ったエポキシ樹脂で巻いた・グラッシングしたサーフボードの性能のポテンシャル(可能性)にはとても感動をしたのを覚えている。丈夫で、値段もちょっとPU(ポリ)より高いけど、PU(ポリ)より長持ちするし・・・だから、もう一般サーファーとしては、脆弱なPU(ポリ)ボードには戻れないなとは考えていたのだ。
EPSエポキシカスタムボードとの出会い(2003年) |
モールドじゃない、もっと対応幅の広いカスタムのエポキシボードないかな〜なんて考えていたその時、ちょうど丈夫で軽くて、そして性能も良い(という触れ込み)のEPSのカスタムボードがカリフォルニアでは出されてきた。そのサーフボードの噂が俺の耳に入ってきて、そしてオーダーをしてしまうと思ったのは、ちょうど今から10年以上も前(2015年現在から起算して)のこと。
それはすごい!試さなきゃ。
早速近くのカスタムEPSエポキシを作ってくれるシェイパーの所に行って、”善は急げ”とEPSのカスタムサーフボードを2本作ってもらった。完成したボードを手に持ってみると、確かに軽くて、しかも丈夫そう。見た目もそれほどPU(ポリ)サーフボードと変化は無い。ストリンガーもきちんと付いていた。プロが使う4OZ×一層オールの軽量PU(ポリ)サーフボードと同じような軽さ。
これは期待できるのでは?
そして、次の日にボードをテストしてみると、ボードの反応も良いし、軽いし、動かし易く、しかも丈夫。PU(ボード)みたいに、こつんとぶつけてもちょっとだったらヒビも入らないし、とても良い感触だった。カスタムEPSボードは、結構気に入っていた。
そう、あの事件が起こるまでは・・・
これから解説する事件は、私が使っていたEPSボードの欠点がむき出しになった出来事。実はPUボードよりもEPSボードは扱い次第では、そのボードの寿命が短くなる
という良い教訓だった。今は僕は、特別な理由(XTRサーフボードへのデーター移管等やむない事由)が無ければ絶対に通常のEPSボード(モールドEPSも含む)は買わない。Hydro FlexのEPSは、水が多くコアーに入らないように工夫しているのでそれなりに安心なのだが、新しいテクノロジーを生かしていない日本で通常売られているEPSだったらPUのほうが良いとも思っている。そのくらい衝撃的なボードの特性の事実だった。
その事件とは?
ある日、カリフォルニアのあるポイントブレイクでサーフィンをしていた時のことだった。その日は波が良かったのだけど、波が良いからか海が混雑していて、トラブルも起こりそうな予感もあった。
そんな中、私がテイクオフしようとした際に、横のサーファーも同時にテイクオフしようとして、お互いぶつかってしまった。最初はお互いにボード・体とも無傷と思った。実際に、海の中でボードも確認したのだが、その状況で気がつく傷は無かった。
だけど、その時気が付かなかったけど、私のサーフボードには水が侵入してしまうヒビがどこかに入っていたらしい(後でテール側のフィンボックス上部ということが判明)。そんなことも知らず、傷が付いてから1時間もサーフィンを続けてしまい、海から上がってびっくり。ボードが不必要に重い。傷から水がドバドバッと入っていそうな感じだった。
こりゃーまずい・・・
と思って、すぐに修理をしようとして、傷口をボトムに発見した。そして、その箇所を直すために傷口を削って乾燥をさせようと1週間放置した。1週間後には、その傷口の表面が乾いたようなので、エポキシ樹脂を使ってリペアーを完成させた。
早速直したボードでサーフィンを再開をした。その時は
”なんかちょっと乗り味が違うな?”
”スピードが出にくいような?”
と思った程度。最初の印象は、それだけだった。だから、気にせずにサーフィンをそのEPSサーフボードで続けた。だけど、1ヶ月もすると修理をした付近に加えて、全く関係の無い場所から
”ボードが異常に黄色くなってきた。”
”乗り味がドンドンと悪くなっている・・・俺のボードどうしちまったのだ?”
と感じるようになってきた。そんな中、ある時またクラッシュが発生。今度は海からすぐに上がり、水の浸入が出来るだけ無いように、気をつけていた。リペアーをする際に、傷口を開いたのだが、水でかなり湿っている。
”おかしい・・・今回はすぐに上がったのに?”
乾燥を1週間させた。でも、なぜか今回はとても乾きが悪い。リペアーした場所は乾かしたつもりだし、傷だけだったらそんなに水が入るはずが無いのに、水が大量にボードの中に入っているようだ。
乾かす時間も2週間・3週間としているのに、全然乾きが悪い。おかしいと思ったので、
”もしかしたら、他の場所にも水が”
と思って、傷口から離れた所で黄ばみがでている場所を、恐る恐る開いてみた。そしたらなんと中身のフォームが湿っている。なぜ?全然場所が違うのに。どうしたんだ!
ショックだった。その場所を乾かしても、乾かしても、湿り気が完全に抜けていないような気がする。ボードを修理しても、なぜか取り回しが以前より重い。
水が入ったまま抜けていない。
ボードが大量に水を吸って重くなっている。
そんな、印象すら受けた。結局軽量で、丈夫だと思っていたEPSサーフボードは、乗り味は全然新品の時と変わってしまった。水を吸って重量増加。もうボードが死んだも同然になってしまい、ボードにどこか穴が開いていないか?といつも神経質にチェックする羽目になった。PUよりも丈夫なサーフボードだけど、水にはとても弱い。EPSはそんな印象が顕著だった。
そんな疑念をEPSに抱きながら、あるUSのサーフィン雑誌をペラペラと読んでいると、ある材料科学者がEPSの欠点をこう述べていた。
”密度の低いEPSの水の吸い具合は尋常じゃない。テールに穴を開け、そこに水色の付いた水を通すビニールチューブをつけて、ノーズに穴を開けてバキューム吸引機で空気を吸い出すと、あっという間にボードのフォームの中を水色の水分が通っていくのが分かる。”
ここで初めて、俺は理解したのだ。
EPSは軽く、丈夫だけど、水にとても弱い。もしかしたら、PUよりも水には弱いかも・・・
あの水を吸ってしまい、ダメになったEPSは後々の勉学のために、電動糸ノコギリで輪切りにしてみた。輪切りにするとびっくり、かなりの場所に水が吸い込まれていた。水があらゆるところに浸入。それじゃあサーフボードの乗り味が良い分けない。だって、乾いていてこそ、性能が発揮できるのがサーフボード。そのサーフボードを形どるフォームが水浸しなんだもの。フレックスもへったくれもあったもんじゃない。
これは付けたしになるのだが、もちろんEPSでも水を吸いにくいように考えられている素材も2015年現在では開発されている。Hydro Flexで使うEPSは、通常のEPSとは全く別の密度を持ち合わせる。2倍ともいえるその密度を持つEPSは、PUと同じくらいの吸水性なので安心して使えるが、通常のEPSボードは中身はわからないので、買うのも怖いだろう。EPSのコアーは、密度が高ければ高いほど、質が良ければよいほど値段が上がる。ファクトリーによっては、中身のコアーはわからないので安い低密度粗悪EPSを使うこともあるので、注意したい。
そんなマイマスの感情を抱きながらも、しぶしぶもう一つのEPSを作ってあったので、仕方無くある状況用に(もう一つのEPSはセミガンとオールラウンドの間のモデル・サイズ)乗ることにした。前のボードと同じようにこのEPSボードにちょっとした傷でもついていないか、ビクビクしながらボードを使っていた。
ある日、波が上がりサイズは14Second、11ft。風も緩やかな北東系(NEウインド)で、北からのうねりだったので、俺と友人のDは北のリーフボトムのポイントブレイクに車を走らせた。ポイントにつくと、波はダブルオーバーヘッド以上ある。
早速EPSで作ったセミガンとオールラウンドの間の6’1”×18 1/4×2 1/4 ラウンドピンのボードを取り出して、パドルアウト。波は良く何度か良いセットに乗っていたが、波にはパワーがとてもある。ある波でインサイドまで乗り、ピークにパドルバックする時に、その悲劇は起こった。
ピークに戻る際に、ビックなセットが入り、ダックダイブ(日本ではドルフィンと呼ぶ)をしたのだが、
”あの波は絶対抜けられない”
という最悪のタイミングでパドルアウトしていた。
やっぱり、その波のインパクトにまともに入ってしまって、波の力のすべてもあろうかという感覚のパワーが俺の体に叩きつけられる。ボコボコと海中で苦しみながらも、海上に顔を出して息を吸う。
そしたら、嫌な予感。なんだかフニャフニャとする感触。そう、板を折ったことがある人なら分かるあの感覚だ。
”EPSサーフボードが真っ二つに折れてしまった”
EPSでどこかの誰かはほとんど折れないと言っていたのに・・・ただの宣伝文句だったのか。いや、”ほとんど折れない”というから別に嘘でもないし、誇張表現でも無い。やっぱりどんなサーフボードでも壊れないものは無いんだ。
がっくりしながら、家路に着く。そんなこんなで、EPSに失望した私は、またあのモールドボードへ嫌々ながらも逆戻り。または、びくびくしながらも性能は満足出来たオール1層巻きのPU(ポリ)ボードもビクビクしながらたまに乗っていた。
ただ、モールドボードの乗り味は相変わらず気に入らなかった。通常のハイエンドサーフボードに比べて、あのグニャグニャした反応の遅さというか、反応の違和感はプロもプロモーション以外には使わないのも納得だ。
革命的な水を吸わないテクノロジーを持つサーフボード”XTR”との出会い |
そんな感じでモールドと大切なPUボードでサーフィンを続けていると、新しいテクノロジーのXTR素材と言うのがあるらしいというニュースを聞いた。
何でもXTRサーフボードは水を吸わないらしい。私は
水を吸わないなんて本当かよ?
と最初はとても懐疑的だった。でも新しいものは何でも試してみたいので、せっかくだからXTRサーフボードも試してみようと、いろいろ地元のシェイパーにも聞いてみた。なんだかEPSとは違ったフォームを使っていて、そして特許関係の申請がかかっているハイテクサーフボードらしい。地元のシェイパーではそのXtr素材のサーフボードは作っていなかった。
だから、XTRサーフボードの創始者であるJavierのファクトリーを訪ねてみた。当時はXTRサーフボードは、カリフォルニアでもそれほど知られていなかったと記憶している。
ただ、あのアルメリックデザインである、チャンネルアイランズサーフボードや、LOSTサーフボード、そしてTimmy Pattersonも削っているボードフォームなので、性能には期待があった。
ファクトリーに行くと、あの有名なアルメリックやLOSTサーフボードのレールに”XTR”とロゴが入ったボードがたくさんあった。
”ふーん、世界のトップシェイパーも、このJavierのファクトリーに直接依頼しているんだ”
と期待感も膨らんだのを覚えている。事前にアポイントをしていたファクトリーを訪ねると、まずいきなりXTRのエポキシプロのJavierがお出迎えだ。
”Hello, are you Yuki? How are you?”
と真っ黒に日焼けしている、コアーサーファーのようなJavierが挨拶してきた。
”Fine thanks"
と型にはまった挨拶を終えると、早速サーフボードについてオーダーしたいのですけど・・・とJavierに伝えた。
XTRサーフボードとの出会い
私は、最初Jaiverがシェイパーと全く知らなかったので、近くにある有名シェイパーのサーフボードをオーダーしようとしていた。だけど、なんだかマイナーなブランドみたいなPulse(現在のJHP)というレーベルもボードラックに入っていたので、
”このブランドって何ですか?”
とJaivierに聞いた。Javierは苦笑い(たぶん俺のサーフボード知らないのか?と思ったのかも)をしながら、
”ああ、俺はXTRサーフボードもシェイプするんだよ”
と答えてくれた。
そうすると、隣で話を聞いていたAndyが付け加えるように、
”Javierはグットシェイパーだよ”
と言ってくれた。
”あっそうなんですが、知らなくてすみません”
なんて日本人的な答えを俺は返し、ボードについていろいろ聞いてみた。最初ははっきり言って、Javierの話を聞く前はオーダーなどする気は全然無かった(すみませんJavier)のだけど・・・
XTRサーフボードストーリーだけどよくよくJaiverの話を聞いてみると、かなり有名なプロやアマのサーファーにもシェイプをしているし、XTRの開発者だしなんだか信頼が置けそうだ。だから何事もチャレンジしろというアメリカで教えられた教訓を胸に、Pulse XTR Shaped by Javierをオーダーすることにした。
”Javierシェイプでお願いします”
とJavierに伝えた。
”オーケー”
とにこやかに彼が笑う。
このJavierとXTRサーフボードとの出会いが、私のサーフィン&サーフボード人生を大きく変えたのは間違い無い。この瞬間こそ、私の人生を大きく左右する出来事だったのだ。
早速Javierに
”俺、初めてXTRサーフボードJavierシェイプに乗るんだけど、どんなボードが良いの?お奨めボードってある?”
と聞いたら、
”じゃあ、今1番評判が良いFrequent Flyer(FF-J)にしてみろよ。このボードは80%以上のユーザーがマジックボードと言ってくれているよ。
”8割もマジックボードなんて本当かな〜。なんだか宣伝文句みたいだ。”
ということと、
”8割もマジックボードなんて、とても性能が良さそうだ”
という矛盾することを同時に思ったっけ。
でも初めての素材・サーフボード・シェイパーなので、彼の言うことを信じてみてそしてトライすることにした。まずは試してみなければ始まらない。
そんなわけで、自分の当時使っていたサーフボードのサイズを教え、すべてJavierお任せのサイズでボードをシェイプしてもらった。サイズは5’7”×18 3/4×2 1/16・スワローテール・XTR5.C。このボードこそ8年たった今でも使っているマジックボードとなる。
今のFF-Jよりも少しボリュームがあるタイプだったけど、基本の路線は同じシェイプだ。
XTRサーフボードストーリーオーダーの料金をその場で支払い、そして家路へと。いつでも新しいボードをオーダーした後は期待感で興奮する。どんなボードになるのだろう・・・ボードの完成予定の3ヶ月後まで今から楽しみだ。
XTRサーフボードの納期はPU(ポリエステル)より長い。通常はアメリカではPUボードは1ヶ月半〜2ヶ月半が平均といったところ。でもXTRサーフボードは特にPUより仕上げ工程がが複雑かつ、樹脂の硬化にも時間のかかる素材なので、倍くらいの時間がかかるらしい。
早く欲しいけど、でも良い質のボードのほうが良いし、それはしょうがないか・・・と考えて、納期の長さも受け入れることにした。ボードの値段がアップして、納期が長い理由はこんな感じらしい。
●フォーム、クロス、そして樹脂などの材料が、PU(ポリ)より値段が高い。
●エポキシ樹脂はPUよりも、乾きが遅い。だが、強度は飛躍的に上がる。
●エポキシ樹脂は、PUよりも粘りと強度があるので、サンディングが難しく、そして時間がかかる。
●ボードをサンドした後のフィニッシュの工程で、XTRサーフボードは、表面にエアバブルの出やすいエポキシサーフボードの表面をさらに加工する。
そして、3ヶ月(と10日)待って、Javierのファクトリーから連絡を受ける。俺の新しいサーフボードが完成したようだ。Javierのサーフボードファクトリーより連絡が来た。
まずはドキドキのサーフボードを実際に手で触るあの瞬間。サーフボードを持ってみると、
”軽い!!"
と思った。こんなに軽いなんて・・・初めての体験と嬉しい驚き。サーフボードの質感は、触ってみるとPUとは少し違う。PUよりなんというか、ボードに粘りがある触り心地。ちょっと叩いてみると、カンカンと音が違う。ただ、見た目はPUとはほとんど差が無い。
テール側を見ると、なんだか温度計みたいのがくっついていて、これが温度を管理する一つの指標になるという。ボードを良く見ると、
なんと穴が・・・サーフボードに穴って開いていて大丈夫なんだろうか?
そんな思いをJavierにぶつけると
”その穴、つまりサーモベントこそ、XTRサーフボードの鍵なんだ”
と言う。
なんだ?どうして穴を開ける必要あるんだ?穴がどんな効用をボードに与えるのだろう?疑問が続く。あのEPSの穴水ドバドバ侵入事件が頭をよぎる・・・不安になった私は
”ねえ、サーフボードに穴が開いていて大丈夫”
ともう一度彼に聞いた。するとJavierは
”その小さな穴こそXTRサーフボードがXTRサーフボードたる所以だ。その小さな穴から、内部のフォームには水は入らない、というよりフォームが水を吸わない構造だから。”
懐疑的な私を理論で説得するようにJavierが話し始める。その穴はいわばフォームが呼吸する役目を果たし、剥離やフォームの劣化を限りなく防いでくれる優れものだそうだ。
説明を聞くと、なーんだ、穴があっても大丈夫!(でもまだわらなないぞ)となって、作り笑顔でJavierに挨拶。ただ、心はハッピーでニコニコ顔で家路へとついた。さあ、お楽しみ。明日はどんな波が待っていて、どんな乗り味なんだろう?
興奮しながら、お気に入りの場所にデッキパットを貼り、そして明日のサーフィンまで10時間しかない。デッキパットは24時間貼った後に置かないといけないとあるけど、大丈夫だろうか?なんて余計な心配をしてみる。こんなことも、ニューボードの楽しみの一つでさえあると思う。
ぐっすりとは言えない5時間睡眠で、朝に目が覚める。さあ、ニューボードを試す日だ。しかも新素材。当たり前だけど、期待で興奮する。
さっそく近くのリーフブレイクに行き、波をチェックする。波は腰〜胸サイズ。北カリフォルニアの屈指のポイントブレイクで、緩いオフショアのクリーンな波。人はちょっと多いかな。波取りで苦労しそうだ。
パドルアウトすると、人がいるいる。ポイントブレイクなのに、10人以上ピークにいるので、ちょっとしたラッシュアワー。しかも、南うねりの場合は、そのポイントぶりがさらに強調されて、波取りに苦労するかも?と考えて波を待った。
そうこうしていたら、ピークに波が1本入る。皆がいっせいにパドルするので、私は次の波に狙いを定める。そうしたら、少しだけ小さめで、ミドル側に2本目の波が運良く自分のところに入ってきた。
でも、少しだけアウトに待ち過ぎな感じで、もしかしたら波に乗り遅れる!という焦りも感じながら全開パドル。そしたら、今までのボードとシェイプが違うからだろうか?ボードが圧倒的なテイクオフ能力を持ち、スーッと走り出した。
”このサーフボード凄い”
ボードのシェイプが良いのか、素材だかはその時点では分からなかったが、とにかくFF-Jは走り出しが最高で、そしてボトムターンの伸びの良さが印象的だった。
”この素材・ボード今まで乗ったこと無い感覚だ・・・”
”サーフボードに乗っていて自分が上手くなったような錯覚すらある”
だけど、今日のこのコンデションだけでは無いのか?ということも考えて、その後にも何度のこのXTRサーフボードを試してた。
”ビーチブレイクのサイドオンショアの小波”
”クリーンな頭半サイズの波”
”オンショアの肩サイズ”
”ショアーブレイクの早めのビーチブレイク”
自分の友人にも乗ってもらった。そしたら、その友人も新しいボードはXTRサーフボードの虜になってしまった。彼はもうXTRサーフボードしか乗らない。
XTRサーフボードの乗り味は、筆者が感じているのは以下のようにまとめられる。
・ノーマル仕上げ(4OZデッキ×2層・4OZボトム×1層)のPUに無い、反応の良さ、そしてPUより圧倒的に長い寿命。
・オール4OZ一層巻きのPU(ポリ)と同じような反応の良さに加え、同比較で平均3〜5倍以上の耐久性能
・EPSの乗っていてつまらないフワフワ感とまるで対照のギュルギュルとスピードが出るそのドライブ感。
・水を吸わないフォームの素晴らしさ。
・モールドの硬いフレックスと比較して、より自然なサーフボードのフレックス。
どれを取っても、総合的に見て私にはどの素材よりもバランスが取れていて、そして買い手・乗り手にとって今までに無い魅力を持っていると感じた。その宝物を発見した時のような感覚と言えば、忘れることは出来ない。
”このボード素材・シェイプ素晴らしい。まさにJavier&XTR素材マジック。”
と心の底から思った。
その後重ねて、カリフォルニアや日本でXTRの素材・EPS素材・PU素材を比較したが、トータルではこのXTRサーフボード素材にかなうものは私にとってなかった。XTR素材と同じように性能の高さが感じられるのは、XTRの他だと、プロが使うPU素材のオール4OZの1層巻きのみだった。
PU(ポリ)の一層巻きだけは、性能はXTR同様に高いと俺は思う。その仕上げだけは、XTR同様に性能が軽く、そして反応が高く感じられて、乗っていて納得の行く素材だったのだ。
だけどボードが3ヶ月もすると、新品の時の乗り心地はどこへやらだ。まるで素材全体が、伸びたカップヌードルの麺のように、しなりが無くなり、そして全体はボコボコ。それは(PUの1層巻きのボードは)、ボードが無料で供給されるプロと、一部の例外の金銭的にかなり恵まれたサーファーが乗るための素材のように感じる。
XTRサーフボード素材の1番の素晴らしさは、PU一層巻きのボードと同じようなパフォーマンス性能を持つ点だ。そして耐久性は圧倒的に高い。PUのそれと比較すれば2〜5倍にも感じられる、多くのサーファーにとって本当に価値のある素材である。そんな感じをいつも受けながら、XTRサーフボードの素晴らしさを感じている。しかも、一部の限られた場所・ブランドしか手に入らないのに、プロ達も結果を残している新素材だ。
俺の手元には、5年前のあの記念すべきXTRサーフボード第1号のFF-Jがまだあり、そして常にサーフセッションに持っていくマジックボードとなっている。足を常に置いているので、フットマークはあるが、ボトムの傷はまだ1つだけ。その他は全くの凹み無し。驚きの事実だ。
黄ばみだって、ホワイトケースに入れて、メンテナンスをしてきた甲斐もあり、5年ものとしては考えられないほどの白さ。
そう、僕がカリフォルニアで探した本当に価値ある素材・・・それがXTRサーフボード素材。
日本の皆様に、XTR素材の高性能・トータルバリューを是非試して欲しい。そんな思いを持ってご紹介しています。
XTRサーフボード/Hydro Flexサーフボードジャパン代表
栗田祐紀