◇Hydro Flexの独自のシェイプ理論が光る
日本で活躍間違いない傑作オールラウンドボード

Hydro Flexの開発者である”Bufo(ブッフォ)が、Hydro Flex専用にデザインしたサーフボード。それがこのFiber Jet(ファイバージェット)だ。名前の由来は、
" ファイバーのようにしなり、ジェットエンジンが付いているようにスピードで飛び抜けていく"
ということらしい。
このボーモデルドを受け取ったのは、カリフォルニアの現地ではなく、日本。初めて日本に入ってきたBufoのFiber Jetだ(たぶん)。ボードを触るとまず感じるのが、軽い!ということだ。持った際のその軽さは驚きだった。フィーリングはまるで”羽”。いわゆるフェザーライトといえる仕上げだ。
Bufoは今カリフォルニアのオーシャンサイドにファクトリーを持っているが、ドイツ人なのでアメリカ人とは少し違った性格を持つ。とにかく細かい。ボードのスペックは、長さ・幅・厚みだけでなく、ノーズ幅・テール幅・全体の容積・ボトムの面積も書いてある。
”Hydro Flex Engineer in Germany”と記載もあり、まさにハイテクを駆使した素材であることは間違い無い。なんと、このボードは空気を入れるのだ。空気を入れることによって、ボードのフレックスを調整する。詳しくはこちらも参考にして欲しい。
今回のボードのスペックは5’11”-19 3/4-2 1/4。僕が乗るボードとしては、大き目だったのだけど、とりあえずこのスペックで乗ってみようと思った。最近体力も衰えてきたので、このくらいでも丁度良いのかも知れない。
スペック上は大きめなのだが、もって見るとフィーリングもグット。楽しみだ。
◇美しいシェイプは見て・触っているだけでうっとり
ボードをチェックする。レールはミディアムソフトレールといったところ。
コンケーブはシングルコンケーブが深めに入っている。エントリーからシングルコンケーブが入っていて、フィンの付近で一番深くなる。テールはフラット気味に抜ける。
そして特徴のある”ラウンドテール”。ラウンドテールというと、乗り味がヌルヌルするというサーファーがいるが(僕もその一人)、果たしてこのボードはいかに?
結果はインプレを楽しみにしていて欲しい。
 

そして、冬の日本ののある日、ようやくテストの機会に恵まれた。
最初のテストライドの日には、お客さんのYutakaさんと、空手家なKさんとご一緒させてもらった。場所はXTRサーフボードジャパン/O'Side Surfショップから車で10分程度の近場の堤防があるサーフビーチ。
当日の波はコンデションが良好だった。
●Day1●
場所:千葉北
風:オフショア
波:腰〜胸 セットで肩くらい
というグットコンデション。面つるだった。XTRとの違いも知りたかったので、最初はPulse XTRのFF2のCarbon3Dでサーフィンをすることにした。
サーフィンをする前に、ご一緒させていただいたYutakaさん、KさんにこのFiber Jetを持ってもらったけど
”えらい軽いですね”
というお言葉。確かに驚くほど軽い。
XTRのCarbon3Dで最初はサーフィンしていたが、こちらは長い間使っているボードで違和感無くサーフィンが出来ていた。乗り味は”キュンキュン”とした感じで、とても軽快かつターンが伸びる。いい感じだ。PUよりも、反応が高く、そしてスピードフレックスというXTR独自の”踏むたびにスピードがつく”という素材の良さはやはりある。
 
そして1時間後に板をXTRからHydro Flexへと交換。まさにBufoシェイプのTuned For Japanをこの日本のビーチで試すその時が来たのだ。実はHydro Flexを初めて日本で試したわけではない。以前BufoシェイプのBoogie Fishを千葉の一宮でテストしたことがあった。この時に感じた”軽くて・速い”という印象は、今日も確実に感じられるだろうが、”Boogie Fishよりもよりパフォーマンスを意識したボードの乗り味はどんなんだろう”という思いもあった。
早速ワックスをアップをしていると、KさんがボードをFF2-αから、T-Rexに交換しに帰ってきたところだった。海が混んでいたので、T−Rexの浮力を生かしてより多くの波に乗るためだという。
海に行って、まずは最初のパドルだ。最初パドルをした時に”うん?XTRより柔らかい気がする”と感じた。パドルの感覚はXTRはシャッキリシャッキリという感じだったが、こいつはすこし柔らかい。PUとXTRの中間といった感じだ。ただ、パドルスピードは速いようだ。
アウトに出て、波を待つ。そしたら、自分のところにいい波が入ってきた。レギュラーの波だった。ポジショニングが良かったので、自分が乗れる波になりそうだった。
パドルをして波に乗る。この時にまさに衝撃が走った。
 
◇まるでターボエンジンが付いたようなテイクオフの早さ
テイクオフ&走り出しが異常に早いのだ。”ええ?この浮力にしてこの走り出し??” 乗ってもらうとわかるのだが、本当に走り出しがずば抜けたボードだ。まさにジェットエンジンのようなテイクオフが味わえて、感動した。
さて、圧倒的なテイクオフ&走り出しの爆発力を持つこのボード。走らせて見たらどうだろうと考えながら一発目の波に乗る。テイクオフしてその後にボードを走らせて驚いたけど、
”通常じゃあホワイトウオーターにつかまってしまうセクションも乗り越える。”
”そして信じがたいほどの軽い取り回し”
という抜群の走りだ。ボードが”フワっ”して走る。僕が最初に乗ったこのFiber Jetは通常の僕のボードよりも浮力が多いのに、走った後の軽さは特筆すべき。浮力が多いけど、動きは全く散漫ではない。リアルに軽い取り回し。テイクオフの能力に加えて、驚きの性能。
”センセーショナルな乗り味。乗ったこと無い人にもこの良さを伝えたい”
そう感じた。
その後に波が掘れて来たので、トップでの返しを試みる。切り替えしも信じられないくらいスムーズで、しかも軽い。そのターンに気を良くしていると、またトップに当て込めるチャンスが。同じようにボトムターンして、トップでもターンをする。
最後に波がクローズしそうになり、そこでロールイン。
最初の波で、すぐにこのボードの良さがわかった。早く、軽く、そして取り回しがイージー。そんな感じを受けた。同時に、テクノロジーの進化というのは恐ろしいとも思った。たぶん、同じシェイプを違った素材で作ってもこうはならないのかもしれない。素材とシェイプのマッチングは最高だろう。

◇小さめの波から、いい波までとびっきり"の楽しさ
このボードの良いところというか、気に入ったところは最初の一発目のライディイングから、素晴らしい感触を得たことだ。だいたい良いボード・自分にあったボードは最初の一発でかなりの確立わかってしまうのだ。っこのFiber Jetは抜群の乗り味。いいボードであることは、間違いない。
”このボードすごいなあ”
と思いながらまたアウトに出て、次なる波を待つ。そしたら、今度はグーフィー方面に走る波が入ってきた。まずはテイクオフのために、パドルをする。
ボードがすーっと走り出す。素晴らしい走り出しだ。なんだろう、浮力はそれほど多くないのにテイクオフには絶対の自信が生まれる。ボードのロッカーとコンケーブ、アウトラインバランスが最高になのだ。
グーフィー方面の波で早めだったから
”あれ、間に合わないかもしれない”
と思ったのだけど、ボードが驚くほどのスピードでセクションを抜けてしまった。先ほどのレギュラーの時と同じ感触で、ボードが優しくしなりながら、ふわっとセクションを抜けていく。アップ&ダウンをすれば、どこまでも走っていってしまう感触だ。
その早めのセクションを抜けた後、ボトムターンでためてトップでの当て込み。バシーンときっちり当て込みをして、今度は波が多少トロくなったので、カットバックをする。カットバックもこのFiber Jetの軽い動きは変わらず、しかもスムーズにこなせた。最後に波が崩れてきたので、最後の当て込みをしてフィニッシュ。
 
その後も、アウトサイドの波やインサイド気味を中心に多くの波に乗り、今日のサーフィンを満喫。波は良かったけど、なによりこのボード最高だと思った。XTRサーフボードをEPSやPUから乗り変えた時と同じくらいの衝撃だった。
●Day2●
場所:茨城
風:サイドオフショア
波:腰〜胸 セットで肩くらい テイクオフは掘れているがその後は弱くなる感じ
さて、Day1のテストで一気にこのボードが気に入った俺は、常にボードを車に携帯するようになってしまった。なによりあの走り出しが最高なのがお気に入りの点だ。しかも早いだけでなく、動きも軽い。
ショールームの休みにあわせて、多くのサーフボードをテストしようと、人の少な目の場所を狙って千葉から北上した。チェックしたポイントは、ハイタイド気味で潮が多かったのだがクリーンなコンデション。そこそこ乗れそうな波もあったのでサーフィンをすることにした。
 
調子が絶好調のFiber Jet。なによりテイクオフ&走りの良さと、その動きのバランスが最高だ。波は、最初にどかっと掘れて、その後は少し波が柔らかくなる。ショルダーがたるめになり、インサイドまでダラダラーと続き、最後はショアーブレイクになる感じの波だ。
まずはアウトに出て、波をじっくりと待つ。人もまばらで、サーフポイントにはたった6人しか入っていなかった。絶好のテストチャンス。
最初の波が来た。レギュラーの波だった。テイクオフを試みるために、パドルを全開にする。ボードがすーっと走り出す。Day1でのテストと同じように、素晴らしい走り出しを見せる。波に乗ると、波が多少掘れていて早い。スピードの遅いボードだと、絶対に抜けられ無いような波だったのだが、このボードは他の遅いボードとは違う。やはり期待通りの速さを見せて、セクションを駆け抜けていく。
セクションの後に、波のトップに当て込める場所が出来る。波のトップにあわせて、ボードをターンさせる。バシューンと音が聞こえそうなほどの、パワーのあふれるターン。ターンの後半まで神経を使い、ボードを180度ターンさせる。軽く、そしてパワーのあるターン。フレックスのある、しなり満点の乗り心地も最高だ。
そのターンの後に、波が急にトロクなる。ここで、スピード性能が低いボードだったら、そのトロメのセクションでボードが絶対に止まってしまっただろう。だけど、驚くことにこのFiber Jetはそのトロイセクションでも、そのスピードをキープすることが出来るのだ。
 
"止まらない・・・"
そう表現しても、大げさでないほどのスピード性能。素材感もばっちりなのだろう。ちょっと踏み込むだけで、ボードがウナリを上げてギアーアップするようだ。
この"止まらない”性能はとても良い。スピードが出難いボードは、前足のほうに重心をかけて、スピードを出す必要がある。そのために、きちんとスピードを出すことが出来ないサーファー(俺も含めて)は、どうしてもがに股になったり、前足でパタパタとボードをしごくような動作をすることがある。自分はがに股気味のスタイルをどうしても矯正したい!と思っていても、ボードにスピードが出ないために、変な動作をしてしまうこと無いだろうか?俺ははっきり行って”Yes"となる。なかなかこのがに股が直らない。悩みに悩んでいるのだ。
でも、このFiber Jetはスピード能力が格段に高いので、変にスピードをつけるための動作をすることが極端に少ない。
スピードが自然に出る=体勢を作るのに余裕が出る=姿勢を矯正する余裕も生まれる
という図式になるのだ。だから、このFiber Jetはパフォーマンスを簡単に出せるだけでなく、自分のスタイルすら矯正させてくれるマジカルなボードでもあるのだ。
さて、インプレに戻ろう。先ほどのトロイセクションを驚くほどのスピードをキープしてインサイドへと走っていく。通常なら絶対に止まっている。。。という厚めのセクションも余裕の走り。そして、インサイドへとボードを持っていく。インサイドは、ショアブレイクドカーン系なので、最後はプルアウト。
 
'センセーショナルな動き"
まさにその言葉がぴったりだ。
この日は、友人にも(168cm・53kg)にもFiber Jet 5'11"に乗ってもらった。友人はある世界的に有名な小波系ボードの5'10”×18 1/2×2 3/16に乗っているのだが、Fiber Jetで1本目で乗った時から
"このボードなんだああ〜。スピードが凄い。でも動きが重いなんてそんなことぜんぜん無い。俺の乗っているボードよりテイクオフも早い。"
と言っていた。もちろん、僕の体重よりも17kgほど軽い彼だったら、僕の5'11"のボードの浮力が多いのは当たり前だ。
だけど、彼も浮力は多めだけど乗り味の重さとか、取り回しの悪さなどは無いと言っていた。もう少し短かったら・・・5'9"とかのFiber Jetだったら完璧!と言っていたので、僕と同じようなことも(テイクオフの早さ・抜群のスピードの乗り・取り回しの軽さ”を感じていたのだろう。
 
●Day3●
場所:千葉弊社の近く
風:ゆるいオンショア
波:ヒザ〜腰
さて、僕が乗っているFiber Jetは5’11”のサイズなので、浮力が多少大きい。だから、前回(上のインプレの記事に掲載ずみ)ジャストサイズの5’9”くらいのFiber Jetに乗ったら、かなりの調子良さじゃないだろうか?と言った。自分用にカスタムしようと思っていたくらいだ。
そしたら、ラッキーなことにHydro FlexのBufo、Markus、そしてEd Santosの計らいでテストボードの5’9”を作ってもらえたのだ。
ある6月に、打ち合わせのためにHydro FlexのUSファクトリーがあるカリフォルニアに行ったら、
”That is for you!(それは君のものだ)”
と、Fiber Jetの5’9”をプレゼントされたのだ。嬉しい喜び。ボードサイズは5’9”-19 3/16-2 3/16。ラウンドテール仕上げである。
触った感じは、特にレールがシャープな感じだ。僕はレールが薄いボードはあまり使わないのだけど、たまにはこういうボードもいいかなあと感じた。
そのボードはカリフォルニアで少しだけしか使わなかったので、日本での本格テストとなった。
テストの当日は波が小さめだったけど、潮の具合で途中はソコソコ楽しめる波だった。今日はFiber Jetの対応幅とその機動性、そして高い走りの能力を存分に示すテストの日となった。

海に入った最初は波がイマイチ厚くて、とろかったけどやはりFiber Jetのテイクオフの速さと、走り出しの良さは変わらない。浮力がジャストなので圧倒的なテイクオフというわけではないのだが、それでも同じような浮力のボードよりは速めなのだ。
このボードは、5’11”よりもクロスの量を多くしてあって丈夫にしてあるために、最強の軽さバージョンラミネーションの僕の5’11”のFiber Jetよりは重さがしっとりとある。
ただし、その重さを感じさせない反応の速さと取り回しの良さは感動すら覚えた。本日は、ヒザ〜腰の弱いコンデションであったが、十分2ターンをすることができた。一般中級サーファーの自分にとっては、かなりタイトなターンを本日の海のコンデションでは引き出せたのでは無いだろうか?
とくにこのボードの良いところは、ボトムでためる際にボードの伸びが素晴らしい事。ボトムでボードをためて上げれば、ギュイーンとボードが伸びていく。しかも、ボードが乗りやすく、安定しているので乗ってから思いのままにボードを高い精度でコントロールできるのだ。
Hydro Flex・・・最初は懐疑的に思うかも知れないが、とにかく乗ってもらえばその素材の良さは明らか。しかも、Bufoシェイプは開発者シェイプ。世界で一番Hydro Flexのことを知っている男だ。間違いの無いボードを作ってくれる。
もちろん、サーファーのスタイルによって好き嫌いがあるかもしれないが、その点はHydro Flex Bufoシェイプ Tuned For Japanを取り扱うXTRサーフJapan/O'Side SurfのYUKIに任せて欲しい。あなたの次回のグットサーフボードを、シェイパーとともに作り上げていく。

◇持っていればサーフィン人生が変わるほどの感動
ちなみに、今まで新素材系に乗ったことが無い人、新素材系に乗ったことあるけどHydro Flexに乗ったことの無いサーファーは、まずは開発者であるBufoシェイプに乗ってもらいたい。
今までは特定のボードに入れ込むことも少なかった俺も、このボードは別格のうちのひとつになってしまった。XTR素材にちょっと浮気なのだが、このボード素材にはこのボード素材なりの良さがある。
何より、浮力が多めで、テイクオフが早いのに、その後の動きがちっとも鈍重じゃない。これは多くのサーファーにとって、非常に魅力的なことじゃないだろうか?
”軽く、そして速くて、しなりがある・・・そしてBufoシェイプの良さ”
Bufoデザインの特徴は、その走り出し最速とも言えるロッカーと、乗った時の軽いフィーリングが出せること。テイクオフが早くて、そして動くボードなんて夢じゃないかと思う。その夢が現実へ・・・Bufoシェイプの真髄がO'Sideサーフを通じて日本の皆様に実現したのである。
ボードは自分に合いそうであれば、標準サイズを選んでも良いし、微調整を加えたカスタムシェイプのオーダーも可能だ。Hydro Flexの魅力は限り無いものなのだ。
このFiber Jetは、その素材感の良さと、シェイプデザインのバランスでサーフセッションを限りない楽しみに変えてくれる、お勧めのデザインシェイプである。


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