Mush Machineインプレッション
トロトロ・だらだら・弱い波・ロング波でも短く乗れる最強のRNFボード
:ロングやファンボードでしか乗れなかった波をショート感覚で乗る!
Robertsサーフボードのラインナップで、超小波・たらたらブレイク・ロングコンデションでもショートボーダーが楽しめる最高にファンなモデルがこのMush Machineです。肩・頭でも乗れないことありませんけど、本領の発揮は膝〜胸サイズ。
実は、筆者は最初このボードの形には不安もありました。最大の懸念は
"あのワイドなテールでターンが出来るのか?”
"あのすっきり目のレールで本当に小波で使えるのか?レールがかみすぎないのか?”
と言うことでした。デザイン的にイマイチ乗る気が起きないなあ、とも最初は感じました。当時はシモンズのようなワイドテールのボードは自分にはイマイチ好みではなかったという理由もあります(この先入観は後で根底からひっくり返されることになります)。
というわけで、筆者がこのサーフボードをオーダーをしてから弊社の倉庫にかなり長い間だ眠っていたのも事実です。だけど、筆者が丸いボードで気にいっているRNFのJHPのDragon CD・RobertのDiamond FishをCAへ置いてきてしまったので、RNF系が手元にもう1本も無い。RNF中毒者の筆者にとっては、この状況は耐えられないので仕方無く、Mush Machineに乗ることになったのです。
乗った後の結果・感想は上の2つの不安をすべて吹っ飛ばすものとなりました。
"あのワイドなテールに超一級シェイパーのスパイラルVEEコンケーブが入っているので、ターンが軽い”
"すっきりとしていても、ソフトなカリフォルニアスタイルのレールとあわせての乗りやすさ・反応が凄い。
やっぱりボードは乗ってみないと分からないし、デザインだけで判断は出来ないと深く感じました。さすがは、CA屈指のシェイパーであるRobert Weiner。これこそ、力無い小波コンデションを最高に楽しませてくれる質の高いデザインです。今回はその魅力を読者の方々へ伝えるべく、インプレを書いてみました。
【Day1】
場所:千葉北ビーチブレイク
波:腰サイズ
風:サイドショア
波質:波が少し寄れて弱く崩れる感じ。トロトロと割れてインサイドまでは続く
コンデションはイマイチでしたが、とりあえずという感じでテストをしました。フィン設定はRobertsフィンをサイドに、そして375のサイズのサイドフィン(いずれもFutursフィン)をつけてクワッドでした。
・テイクオフはとてつもなく早い・と言うか、Mongo Fishに迫る勢い
・レールがすっきり気味なので、軽めのタッチで回せる
・テール幅が広いので、スピード能力が過去最高値くらいの感じ
イメージとしては、ファンボードのようなスピードに、RNFのような小回り度合いを付け加えた感じです。レトロミニシモンズのような浮遊感と、レトロシモンズよりも明らかに動きを出せる感じで、乗っていて癖になりそうです。
同じような形のRNFではDragon CDのほうが動くけど、テイクオフはこちらのほうが早い感じしました。パドル感はあまり変わりませんね。
Dragon CDはもう少し大きな波に使えるけど、このMush Machineは小波専用としたほうが良さそうとも感じました。だいたいすね〜胸くらいかな?Dragon CDはすね〜頭オーバーくらいの対応幅。小波はMush Machineのほうが強いです。スピードが止まらないからです。
とろくて普通のボードじゃあ止まってしまうセクションも、踏み込み無しで抜けていきます。ちょっとでも波が割れていれば、走り続ける走破性を持っています。 浮力が強いからと言って、レールが入らないとかターンが出来ないことは一切ありません。レールはすっきりしていて、体重をかけるとしっかりと・くるりと回ります。
テール幅が広いので、急激なターン・縦の動きというよりも、スムーズなカットバックや流れるようなターンのほうが得意です。Dragon CDはどちらかと言うと、急なターンもそれなりに得意なタイプですが、ゆったりとしたスピードのキープ度合いはMush Machineのほうが上でしょう。
カットバックをしても、その最中に一切スピードが落ちず、ホワイトウオーターまで安定してボードを持っていける。そしてそのホワイトウオーターに当て込んで、ボードを反転させても、ボードが安定していて失速しないそのスピード感は、今までのボードでは味わったことの無い新鮮な感じがしました。
【Day2】
波:もも〜腰サイズ
風:最初はサイドオフショア〜オンショア
波質:テイクオフだけパコッと掘れ気味になるが、乗った後はとろくなる。ただし、中にはとろくならなかったりする難しい波。オンショアになってからは、面がガタガタしてきたが、それでもライドは可能。
2回目のテストは、1回目より波は少し掘れているのだけど、予想が難しい波でした。ショルダーがあったり、なかったりの波。前回より難しめのコンデションですが、ボードの特性をまた違った波の状況で試すには良いテスト日和でした。
ボードのテイクオフの速さは相変わらずですが、本日は少し掘れた局面でもボードは使えるということが判明。テイクオフで掘れる場面でも、タイミングをきちっとあわせるとばっちりと乗れます。ノーズが刺さった局面はありませんでした。
乗った後も、ボードはアップ&ダウンもけっこう軽快で、走り続けるそのスピードは健在。筆者は、ジャストよりも1インチ長くして、浮力も多めにしているのでアップ&ダウンは少しゆったりとしてリラックスして乗る感じでした。だけどジャストサイズの5'3"とかの長さにすれば、もっと軽く動いてくれたことでしょう。次は攻めるのであれば5'3"-19 3/4"-2 1/4"でオーダーしようと考えています。
圧巻なのは、他のサーファーが苦労してなかなか乗れない波でも、軽く乗ってしまうこと。かなりおこぼれの波をもらって、多くの波に乗れたのが嬉しかったです。通常のショートとは、また違ったポジションで波に乗れるので、その他の人がガツガツとピークで頑張っているのを尻目に、少しインサイドにポジションを取り、違ったリズムで波乗り出来たのも良かったです(というより楽しかった)。
ハイパフォーマンスショートとは、全然違った視点で波乗りが可能です。何より、すべてのおいて余裕を持って波乗りを楽しめるのが最高でした。
【Day3】
波:膝〜ももサイズ
風:オフショア
波質:波は綺麗で、海面はクリーン。ただし、サイズが極小。最初は止めようかな・・・と思うようなサイズ。
本日は波のサイズが一気に下がった千葉北エリア。弊社のボードテストエリアは北西の風だから、クリーンな海面です。最初は止めようかな・・・と思うようなサイズの小ささだったけど今日は圧倒的な小波マシーンを引っ張り出しました。
波は小さく、ロングコンデション。だけど・・・この素晴らしいボード廼おかげで、なんとなんとの2アクション。膝〜胸までだったら、このボードの性能が最高に発揮されるように感じました。インプレのDay1とDay2だと、少し5'4"だと大きいかな?と思っていたけど、乗り込んでいて慣れたから、今の5'4"のサイズでも十分動かせます。
最初は浮力多い か?長いか?という意識を吹っ飛ばしてくれました。小波限定だったらこれで良い。実は同系統のRobertsの5'3"を頼んじゃったけど、これ5'4"で良いです。ご覧いただくお客様にも
"いままであんなテールデザインは見たこと無い”
"これは凄いですね”
とお褒めの言葉をいただきます。あんなテールじゃあ乗り味想像も出来ないという疑念も含めながらのコメントいだだきますが、このボードを一度乗ったら
あのテールエリアがとても広いスクエアーなデザインこそがこのMuch Machineの最大の利点・魅力
と気づいていただけます。
【Day4】
波:膝〜ももサイズ
風:サイドオンショア
波質:見た目かなり良くない。どうにか乗れるような感じの見た目。横に走って当て込めれば奇跡的。
はっきり言うと、見た目最悪です。だらだらかつ、ショルダーがあまり続きません。だがしかし、あるUSの雑誌で
"ホワイトキャップがそこらじゅう。オンショアチョップの風波でも、熱いサーファーがごまんといるフィンランド。どんな時・コンデションでもSurfing is always fun!"
という記事を読んだのでやってみました。
ジャンクな波ですけどね、希にあるんです奇跡的1アクションの波が。オンショアチョップでもボードさえ良ければ楽しめる。ロングに対抗可能な
Mush Machine
ですよ、皆さん。今日見た目より乗れそうだったけど、ボードが走らず全然楽しくなかったそこのアナタはこのボードをお試しください。
今日のようなたらたら・だらだら・スモールな波でも、ちょっとのスペースさえあれば走ります。そして、インサイドまでスピードをキープしながら乗れるのです。
しかも、ノーズがLongのようなフルノーズじゃあ無い所もショートボーダー好みになっています。
テイクオフのバランスを高めるのに、このボードデザインにはロングのような丸いノーズは必要ありません。テイクオフで重要なのはノーズから6インチマークあたりからセンターまでの幅やフォイル(つまり厚み)、ロッカー・アウトラインカーブのバランスです。
このMush Machineはフルラウンドの丸いノーズよりも、ノーズエリアのアウトラインはすっきりしています。
そのために、ノーズのスイングウエイト(つまりノーズの重さ)が無いので、波のトップへボードを持っていった際により軽く板を返せるのです。
Mush Machineは見た目が
"テール幅を広くするために、テールの見た目が四角くくなります。そして、ノーズはフルラウンドよりもすっきりとさせています”
だから、正直見た目の格好のバランスはシモンズのようなフルラウンドノーズ系よりバランスが良くありません。だから、
もっとノーズが丸かったら(またはもっとテールが絞られていたら)カッコ良かったのに
と感じるかもしれません。実際栗田はそうでした。
だけど、このデザインこそロングしかいないスモールウエーブで、ショートボードで乗る最終兵器だとすぐに分かります。
このボードのノーズがもっと丸かったら、あそこまでターンが軽くない
このボードのテールがもっと絞られていたらあそこまでの走り(ドライブ性能)は無い
と乗っていて常に感じます。Robertもそういったことを、彼のゴットハンドで考えてシェイプしたのでしょう。
テイクオフもスムーズで、乗ったら
そこまで走るか〜〜!
というくらいの、走破性があります。そして見た目とは全く異なる、すっきり目のレールがターンの軽さ・レールの入れやすさを確保します。そして、サーフボードの中に隠してあるいわゆる
"隠し浮力(フォーム)”
がそのすっきり目のレールとは全くイメージ逆な浮力を出してくれるのです。
これこそ、ロングしか楽しめないコンデションでの最後・最後のボード。お勧めです。
【Day5】
場所:ビーチブレイク
波:ももサイズ
風:弱いオンショア
波質:波のサイズとしてはロングコンデション。風は弱く、海面は綺麗目だが、波の力がとにかく弱い。
本日の千葉北・北はサイズ・・というより波がとてーも弱い感じになりました。こんな時こその一般サーファー最強ボード
Mush Machine
を引っ張りだして綺麗な海と穏かな風、そして奇跡の走って1発を楽しみました。肩サイズでも乗れるけど、やっぱりこんなスモールウエーブのほうが更に良さが分かるようです。
テイクオフはロングには負けちゃうけど、乗ったらロングと同じくらい走りがあります。先の尖ったショートのように、波がトロくなっても途中で止まりません。最後まで走りきる走破性があります。
それでいて、ロングやファンとは全く別の動きが可能です。ミッドレングスはそれはそれで楽しいでしょうが、やっぱりショートに慣れてしまって、ショートのクイックな動きが欲しくてそんなミッドレングス飽きちゃう人もいるでしょう。
スモールウエーブでは、ボードが大きいとテイクオフは確かに速いでしょう。ただし、その分動きが直線的になり、そのままダダーっと走って終わり・・・てありません?
そんなあなたのお悩みを100%解決してくれるのがこのMush Machineです。
通常のショートよりも明らかに速いテイクオフ。そして、小さな波のクイックなセクションへも反応可能な短さ。ロングやファン・ミッドレングスでは飽き足らないサーファーで、ロング並の走破性が欲しい方・ショートにこだわる方へ・・・究極のボードです。
このボードは小波系ということもあり、通常のPU素材よりエポキシ素材で作ることを強くお勧めします。反発の良いHydro Flex Natural(PUフォームかHD EPSフォーム)か、軽いSuper Chagerで作ることを強くお勧めします。小波での機動性や、スピード性能をアップしてくれます。
ボードはデザインとしても、細部のこだわりがあります。このボードはロッカーはフラット気味です。このデザインは、テイクオフを早くしてくれるし、フラットな局面でもボードを走り続けさせてくれます。ただし、欠点もあります。欠点はテイクオフやライドの際に、掘れている局面があるとノーズが突き刺さりやすいということです。その欠点を出来るだけ和らげる工夫も、Robertはノーズエリアに入れました。
ノーズエリアのタックドアンダーエッジ(ボトム側のレールエリアのシェイプ)が柔らかく、そしてかなり削いであるためにこのエリアに水が当たっても、その水のパワーを逃がしてくれる効用があります。ノーズが突き刺さりそう・・・という状況で、その突き刺さる確立を下げてくれるのです。このデザインにより、フラットなボードながらノーズの突き刺さりが最小になるというボードになりました。
また、レールのすっきり度合いにより、レールが入れやすいのですがテールエリアにも工夫を凝らしています。こういったボードはボリュームがあるので、概してテールのフォイルが厚くなりがちです。そうすると、テールエンドが浮き過ぎてしまい、ボードのコントロール性能が落ちてしまいます。
その欠点を解消するために、テールエリアを薄くするためにテールエンドから1インチ前から、そのテールエンドにかけて傾斜をつけてテールエンドを薄くする”ステップダウンテールエンド”デザインを取っています。これは、White DiamondやWhite Diamond2でも採用されているRobert考案の優れたシェイプデザインです。
Mush Machineこそ、すべての人に乗っていただきたいエクセレントデザイン。
ショートにこだわり、ファンやロングではなく、小さくても・とろくてもやっぱりどんな波でもショートに乗りたい方。
このボードこそあなたのファイナルアンサーです。
@なんだよこの波小さすぎる
Aなんだよこの波テイクオフしても、とろすぎる
Bなんだよこの波パワーゾーンがほとんど無い
Cなんだよこの波フェイスが薄い
Dなんだよこの波通常のショートじゃあテイクオフすら出来ない。
Eなんだよこの波通常のショートでテイクオフしても走っていけない。
なんて問題を抱えているサーファーさん、このボードを使ったら今日みたいな波でも気分最高です。
このボードは、ショートボードをメインに乗る方へは、メインボードというよりもセカンドボードとして持っていると最高の楽しいボード。気分も変わるし、サーフボードのデザインの奥深さを体感出来るシェイプです。
浮力系で丸いノーズが好きな方であれば、これをメインボードとして使うことも可能です。その際には4フィンと3フィン、はたまたKellyが使うVonsol社が開発した、Nubstarフィンを使い分けすると良いです。フィンの設定によって、ボードの個性が結構変わります。
動かないのでは?と不安になる方はご安心ください。幅広なアウトライン・厚めながら、レールエリアは意外とすっきりとしています。ただし、丸めのカリフォルニアフィーリングのソフトレールは継承。レールボリュームは10中5くらいです。これでも、多くのフォームがボードに隠してあるので浮力たっぷりなのです。
パドルは楽に、テイクオフは早く。そしてターンをする際には、軽めのタッチにてターン・・・聞けば聞くほど素晴らしく聞こえるけど、本当にグレイトなボード。
この手のボードで皆様が不安に思う
・ダックダイブ(ドルフィン)が難しいのか?
の件ですが、こちらは全く問題ありません。理由はミニシモンズほどノーズ幅は広く無いし、なによりノーズエリアのレールエリアのボリュームはそれほどないので、ノーズを沈めやすいためです。
通常のショートと同じような厚みで、余裕を持った浮力。そして、少し薄くしても全く問題ありません。動きを重視する人は、通常ショートより8〜9インチ短くして、少しだけ薄くしましょう。
同じRobertsのWhite Diamondを乗っている人は
・White Diamondと同じように、ある程度パフォーマンスを重視する=White Diamondより3インチ短め
・White Diamondよりゆったりと乗る=White Diamondより1〜2インチ短め
とすると良いでしょう。
栗田のサイズは
5'4"-19 7/8"-2 1/4"
です。これでもかなりの浮力(栗田は60kgくらい)となります。皆さんが、ボードを見て一番驚くのが、テール入った"スパイラルVEE"。以下のプレシェイプの写真を見ると、テールエリアのスパイラルVEEが深く入っているのがわかります。スパイラルVEEとは、通常に平坦なVEEではなく、VEEの両側に深いコンケーブ(溝)を掘るタイプのボトムデザインです。このサーフボードデザインの利点は
・VEEだけのように平坦な乗り味にならず、ターンで加速をするボトムとなる
ということでしょうか?カリフォルニアのボードで多く見られるデザインで、特に幅広のボードにマッチします。
ボードのアウトライン(特にテール)の比較を見ると、その特徴がくっきり。左からBlack Dump Track、Diamond Fish、Mush Machineです。
このテールをご覧いただければ、推進力の違いがわかるはず。動きの性質もなんとなく感じ取れるでしょう。