Whiete Diamondインプレッション
◇Robert Weinerを世界のトップクラスと知らしめした傑作ショートボード
:乗ればわかるその感動ものの性能・パフォーマンス
White Diamond(ホワイトダイヤモンド:以下WDと省略されることもあります)インプレッション:
Robert Weiner(ロバートウエイナー)。カリフォルニアはベンチュラに拠点を持つベテランシェイパー。
彼の削るボードは、トッププロから地域のアマチュアまで幅広い人気を誇る。ベンチュラは、ビーチブレイク・リーフブレイク・河口など何でもある波の豊富な場所。多くのプロサーファーを輩出してきた屈指のサーフタウンだ。そんな豊かな波・サーフインダストリーのメッカの一つにファクトリーを構える彼は、ハイパフォーマンスショートボードの神童とも言える卓越した技術を持ち合わせる。
このRobertデザインのWhite Diamondは、彼が2010年のUSでのシェイパーの最高の栄誉の
”Shapers of The Year”
を獲得させたとも言える代表作である。あの世界トッププロのDane Reynoldesが気に入って、CIサーフボードに模倣(後にこれがDumpstar Diverとなる)させたほどの性能。
Robertはこのボードを作ったのは偶然だったと言う。ある日、Robertファクトリーのブランク職人が、実際のオーダーサイズボードとは異なる、誤ったサイズのプレシェイプブランクを作ってしまった。オーダーのブランクよりも、短く・幅広・厚め。
せっかくなので、このプレシェィプのブランクから新しいボードを作ろうと考えたRobertは、ロッカーの数値を調整。ノーズロッカーは弱めに、テールロッカーはタイトなターンをするために多少キックを強めに取る。そして、ボードのスピードのためにシングルコンケーブを入れ、ボードのテール形状には水のリリースを早めるために1.5インチの深さのダイヤモンドテール(レールラインを1.5インチ短くしたダイヤモンドテール:通常のダイヤモンドは0.5〜1インチくらいレールラインを短くする)を施した。
このボードを、当時チームライダーだったAdam Virs(アダム・ヴアーズ)がテスト。彼がこのボードを一回テストしただけで、こういったと言う。
”これこそ俺が求めていた、短めのスピードが高いパフォーマンスボード。今まで最高なボードの一つだぜ“
と。
短いボードなので、ボリュームはある。だが、そのボリュームにもはっきりとした意味がある。モダンコンケーブ(最新のコンケーブ)とダイヤモンドテール、そしてロッカーのバランスによりトップターンでも切れがあり、そしてスピードにすぐに乗ってくれる。まさに彼のマジックボードになったのだ。
このテストのフィードバックを聞いたRobertは、このボードをすぐにモデル化した。そしてこのボードのユニークかつ高い性能は多くのサーファーの心を捉え、瞬く間にカリフォルニア中で人気もモデルとなった。スピーディーかつ、ルース。
そして、当時はWTサーファーだったDane Reynoldesがオーダーし、このボードを絶賛。先ほども言及したが、彼はこのボードを気に入りすぎて、同じようなボードを作ってくれとCIサーフボードのシェイパーに頼み込んだくらいである。
私のテストボードは、Hydro FlexのEPSのSuper Charger。こいつは空気が入っている間は水が入らないので、そこは非常にありがたいところだ。
さあ、期待抜群のこのボードどんな動きを見せてくれるのだろう。私のボードサイズは、5’6“-19 1/4”-2 1/4“となる。実は私は、このボードをHydro FlexのEd Santosに借りてテストをした。
だが、テスト終了後にこのボードのファンになった私は
どうしても!
と頼み込んでそのボードを買い取ったという経緯がある。それほどいいボードとまずは言っておこう。
●Day1●
場所:Oceanside Harbor(ビーチブレイク)
サイズ:腰〜胸
風:弱いオンショア
質:トロめの波+癖のある波
さて、最初のテストはHydro Flexのファクトリーの近くのOceanside Harborである。テスト当日は、波がイマイチでパワーもあまり無く、そして波のトップのみペロッと割れる系統の波だった。しかも、寒いグレーの空の小雨もパラツク天気。カリフォルニアの青い空、オフショアな風とは全く異なる海のコンデションだった。
だか、海には熱いサーファーで満載。チョッピリ混んでいる。
実際、海のチェックした際はやめちゃうおかなあ・・・とも思ったくらいだったけど、せっかく海に来たのだから少しだけでもテストしようということで、パドルアウトすることにした。
最初のパドルの感じは、パドルが楽で浮力があるのにノーズ付近が軽く動きそうという印象。これは良さそうだ。CI値はだいたい27リッターくらいとなる。
混雑しているピークを外し、波の質はイマイチだが波を取れそうな場所でウエイテング。そしてら、ラッキーなことに波が入って来た。レギュラーの波だ。
緊張の最初のテイクオフをする。この瞬間がまずはボードを判断する重要なファクターとなるのだ。ボードがスーッと走り出す。早いテイクオフ。とてもスムーズなテイクオフでスタンドアップもまるでマジックカーペット(魔法のじゅうたん)に乗っているかのような印象だった。
そして、テイクオフの後のそのスピードたるや・・・波に乗った後にすぐにトップギアーに入れて爆発的なスピードが出せる。素晴らしいスピード性能を持つボードだ。テイクオフ&スタンドアップをして、波を見ると波が早くてクローズアウトしそうだ。だが、この時ボードの優れた点をまざまざと体感することとなる。
ボードのスピード性能が高く、しかもレールTOレールが早いので、波の上下を使って余裕のアップ&ダウン。しかも、ボードの反応が早いのでアップ&ダウンの動作が軽い。ボードも貼りつく感じではなく、カリフォルニアタッチの軽快な操作性なのだ。
乗っていて
”こんなに良いボードは久しぶり、いや過去でもほとんど無い“
と思った。
軽くアップ&ダウンが出来てスピードがつけられるから、クローズしそうなセクションの場所でもグングンと抜けていく。途中に当て込める場所があれば、ボトムでためて、そしてトップでも当て込みが出来る。
これは素晴らしいボードだとすぐにわかった。あのDaneが気に入る理由もうなずける。
そしてインサイドに差し掛かる。インサイドの波は膝以下だったけど、スピード性能が高いボードなのでトロトロ・スモールエリアでもまるでエンジンがテールエリアについているように走り抜けていく。そして、最後のフィニッシュもスピードを保ったままに!
“このボード凄い・・・こんなボードがあったんだ”
と驚愕の感想だった。
今日のテストで、ボードの優れたところを何点も発見したが、際立った点は以下の2点。
@ 何本も乗った波で気がついたことなのだが、これほどテイクオフが早いのに(ある程度のボリュームがあるのに)ノーズエリアがとても軽いことと、そしてターンの際のボードのひっかかりが無いことがとても気に入った。軽くアップ&ダウンするだけで、感じられる素晴らしいスピード感。そして操作性の軽さ・・・どれをとっても、小波系で私が求めていた現代短めショートボードの形だった。
A レールにはボリュームがあるのだが、そのボリュームが良いのだと思う。波が弱めのセクションに来ても、ボードが波に沈まず、引っ掛かりの無いボトムターン・カットバックが可能となる。
カリフォルニアでのテストで、このボードは日本のビーチブレイクでも幅広く活躍すると確信した。早めの走り出し、止まらないスピード、トップでのルースな動き・・・最高なボードだ。
さあ、カリフォルニアの魅力が十分詰まったボードを日本へと持ち帰りテストだ。
●Day2●
場所:千葉北ビーチブレイク
サイズ:肩〜頭。セット最大頭半
風:オフショア
質:ある程度パワーのある低気圧通過後の波
さて、テスト2回目は日本のビーチブレイク。今回は前日に低気圧が通過して、波のサイズは頭を超えるほどだった。通常は小波系ボードとして捉えられているこのWDは、どのような感じを与えてくれるのだろうか?大きな波にもある程度対応できるのだろうか?
本日のテスト場所は波が大きくなると、ビーチからのパドルアウトよりも横にある堤防からJump Inしてピークにアクセスしたほうが良い。だから、今日も堤防から飛んでの海へのアクセスだった。
アウトの波は人でごった返していたが、向かって右側に行くと流れが強いのでそちらは人がいない。パドルの連続も覚悟であえて人の少ない右側のポイントにてのテストとなった。波はグーフィーが中心だったが、稀にレギュラーも乗れそうだ。いい波なので、期待も高まる。
早速グーフィーの波がやって来た。パドルをすると、やっぱりこのボードはテイクオフが早いのだろう、波が大きくても余裕でボードが走り出していく。頭くらいのサイズだろうか?あとちょっとで波に乗れたのに・・・系のテイクオフと走り出しではなく、きちっと狙った波にテイクオフが出来る。早い・スムーズなテイクオフだ。
早速ボトムに降りて、ボトムターンをする。本日は小波とは違った感じの波なので、ボードが最初は少しだけ短く感じた。だが、これは単に乗り方をちょっとアジャストすれば良い。結局最初のターンは、ウルトラスムーズにターンの前のポジショニングを取ることが出来た。こんなに短くても、頭サイズでもいけるのが嬉しい。
ボトムターンをして、トップへとターンをする。波が小さいわけではなく、きちっとフェイスが整っているタイプの波であるので、きちっと波の斜面を滑りながらターンをした。
そして、またボトムに降りて、今度はカットバックをする。シルキースムーズな引っ掛かりの無いカットバックをして、そしてホワイトウオーターに当て込んで、そしてまたインサイドまで走っていく。
このWBモデルは、スピード感の溢れるボードなので、スピードを無理に踏み込んで付ける必要性はまったく問題無い。スピーディーかつ、操作性が軽い感じでボードを走らせられるのだ。そして、波がクローズアウトするので当て込みをして最後のフィニッシュ。
最初の1つの波でわかった。このボードは、ある程度大きな波でも全く対応できる。Robert曰く、ダイヤモンドテールの先が波に食付いて(バイトすると英語では言う)、ボトムターンをしてもスピンアウトしないのだという。まさにそのとおりに感じた。
最初の波で
“うん、いい感じ”
と思ったのだが、5’6“のボードが少し短く(特にフェイスのある大きめな波でのカットバックやカービングターンの際)・また反応が良すぎると感じたのも事実だ。だから、波に乗るためにアウトに戻る前に、一度車に帰って2つの調整をした。
@ まずは空気圧を5pciから、2pciへと変化させた。(つまり空気圧を下げた:ボードの柔らかさが増す)空気弁から空気を抜いて、そしてエアーゲージにてボード内の空気圧をチェックした。
A 次に、フィンをM5からPC-7へと変えた。(PC-7は、M5より一回り大きなフィン)
以上の変化をさせて、またアウトへとパドルアウトした。その調整が大正解。乗ってみて明らかにボードが安定し、無駄な動き・不安定性が抑えられて、更にはしっとりとした・優しい乗り味になったのだ。じゃじゃ馬から、まるで調教をされたサラブレットへ・・・そんな表現が似合うくらいの変化だった
テストしたHydro FlexのSuper Chargerバージョンは空気調整があり、そしてHydro Flex Naturalよりもやや空気調整とメインテナンスが複雑だ。Naturalは、PUフォームにエポキシ3Dグラッシングをしているという構造なので、基本は通常のPU/Epoxyハイブリットと同じケアーでよい。リペアーもポリ樹脂やエポキシ樹脂どちらでも使える。
これに対してSuper Chargerは、フォーム内の空気圧を調整するためにデッキ面に空気弁があり、クラッシュしても空気圧が入っている間はフォームが水を吸わないが、修理の際には必ずその空気弁を開ける必要がある。そうしないと中の空気が外に出ようとして、修理箇所の樹脂が固まる際に小さな空気が通る穴があいてしまうのだ。
いわばF1カーのSuper Charger(メインテナンスが必要)と、一般道路を走れるポルシェやフェラーリなどのスポーツカーのNatural(F1カーよりもメンテナンスが簡単)といったところか?
ちなみに、両タイプの構造を比較すると見た目以外にも、乗り味も多少違う。
Super ChargerはPUよりも動きがしゃきしゃきしていて、より機敏な動きが出来る。NaturalはPUボードの延長線上なので、ドライブの効いたしっとりとした乗り味となる。
Super ChargerかNaturalかは、もちろん乗り味や予算・メインテナンスなどの要素で決めていただければよいだろう。いずれのバージョンにせよ、一般のサーファーが乗るのであれば、通常のPUよりも満足度は平均して高いはずだ。軽く・丈夫・そして高性能とくれば、何本もPUボードを買える人以外は、必ず満足してもらえるものと自信がある。
何本もPUを買える人や、いわばフリーにボードを買えるプロはわかっている。PUボードはすぐに寿命で乗り味が変わり、Hydro Flexのように性能を高くするために軽く仕上るのであれば、2〜20セッションくらいしか持たない。以前MagicだったPUは、すぐMagicではなくなってしまう。だから、世界のプロはいつも新しいPUボードに変えているのだ。すぐに寿命が無くなるからである。
Hydro Flexは軽く、丈夫、そしてプロが乗るようなPUボードの調子良さがある。この素材、White Diamondのシェイプの良さをさらにスパイスアップして引き立てる。小波ボードでもっさりとしたボードではなく、ポイントノーズのタイプを探しているそんなあなたに是非試していただきたい。
●Day 3●
波:もも〜腰
場所:茨城県某所
風:サイドオフ
波質:トロ早目
さて、今日は日本の典型的なサイズ・波質・混雑具合でボードのテストをすることが出来た。小波系・波は多少ざわつき気味・混雑・・・これ以上のアベレージコンデションは無いのではないだろうか?
波質はダンパーのような、波のセレクトを誤ると途中で波が無くなってしまうタイプ。ただし、良い波を選べばインサイドまでつないでどうにかワンアクションは可能な波だった。
早速White Diamondを取り出して、ワックスアップ。冬の朝で、気温は1℃。ただし、ドライスーツ+ブーツ+ヘッドキャップ+グローブのフル装備なので全く寒さは感じ無い。
パドルアウトする。混雑ながらも波が取れそうなピークへとポジショニングをした。
早速セットの波が入る。パドルをして、波に乗る。いつもながら、White Diamondは走り出しが早い。胸エリアの隠し浮力のおかげだろう。走り出しが早いボードだからって、ノーズエリアがもっさりとするわけでも無い。絶妙なテイクオフタイミングなのだ。
波に乗ると、このボードの特徴のスピード感溢れる走りが楽しめる。しかも、アップアンドダウンが容易。浮力が多めで、テイクオフが早めのボードはアップ&ダウンの挙動が遅かったり、ボードがまるで波に食いつくようにドロドロ・・・として鈍い反応のものがあるが、このボードは軽快そのもの。アップ&ダウンが非常に軽いのである。
その軽いタッチのアップ&ダウンで、スピードを簡単に出すことが可能なのである。
通常ならば絶対に抜けられないような波も、アップ&ダウンの微調整+Hydro Flexの素材のスピード感で抜けてしまうのだ。これは素晴らしい性能だと思う。
良くスピードが出なくて、前足をフンフンとさせているサーファー(またはそれで悩んでいるサーファー)はいないだろうか?このボードはそんな無駄なフンフン踏み込みをせず、ボードが自然と走っていく系統のボードだ。ボードに入っているシングルコンケーブも効いているのだろう。
早めの波を、猛スピードで抜けてそしたらもうインサイドのクローズアウトセクションに差し掛かった。そしてそこで当て込みをして爆発力のあるフィニッシュ。
ボードを当て込む際の爆発力とは、サーフボードを波に当てる際のキレとスピードが融合したものとお考えいただきたい。当て込みの際にボードがとてもルースで、そしてスピードを保ったまま当て込みができるである。
素晴らしい乗り味。小波系のパフォーマンス(かつ楽しい)サーフボードの真骨頂を体感した瞬間だった。
その後も、何本も何本も同じような波でボードのスピード性能・走りの良さ・そして最後のフィニッシュのアクションの爆発力を楽しんだ。
素晴らしいボードなので、お客様から多くの賞賛のインプレをいただいている。このボードを気に入る人は以下のようなタイプのサーファーだろう。
@小波でルースにかつスピード溢れる乗り味を味わいたい人
Aラウンドノーズよりも、ノーズが軽めの小波用ボードを求めている人
Bシングルコンケーブってこんなに軽く動くんだ!と感動を味わいたいサーファー
Cパフォーマンスを重視した小波系ながら、少し楽をしたいサーファー
ちなみに、このボードでテールが不安定(クリクリと回る)な感じを受けたら、フィンを大きめのものにして欲しい。RobertsはこのWhite Diamond用にフィンも開発した(Roberts Fin Futuresタイプのみ現在は利用可能)のだが、このフィンは大き目のフィンだ。テールが広いボードなので、フィンは大き目のほうがベター。もちろん標準サイズのフィンでも良いだろうが、是非大き目のフィンもトライして欲しい。
とにかく、Robertsサーフボードのベストセラーモデル。カリフォルニアを100%感じられるこの傑作ボードはまさにすべての人に持ってもらいたいと自信を持っておススメする。