◇80%以上がマジックボードという触れ込みの驚くべき対応幅を見せるボード

FF-J・・・Javierによれば、80%以上のユーザーがマジックボードと言うらしい。そんな触れ込みのボードだと
“本当にそんなにいいの?だったら是非試してみたい!”
とか
“8割がマジックボードなんて本当かな〜?”
なんて思ったりするのではないだろうか。
俺はというと、最初はその言葉を疑ってかかってしまった(Javierさん、申し訳ないです)。というのは、XTRサーフボードは今まで使ったことも無くて、このFF-Jが自分にとって初めてのXTRサーフボードだったから。でも、このサーフボードは本当にマジックボード。詳しくは僕のXTRとの出会いにでも語っているのだけど、ボードにはもう5年も乗っていて、今までのボードの中でもお気に入り。
今まで乗ってきている数多くのボードと比較しても、
“Frequent Flyer(フリークエントフライヤー)は俺にとってマジックサーフボード”
と言い切ることができる。
俺がこのボードを試したのは、忘れもしない5年ほど前の(2008年現在)。あるカリフォルニアの屈指のポイントブレイクだった。そのブレイクは、サウススエル(南うねり)だと、ブレイクする場所がとても狭くて、テイクオフポジションにとても苦労する。そして、人も多く、混雑しているので余裕を持って自分の場所を確保するのは難しく、通常のように長い間パドルをして自分の思いのままにテイクオフできる場所では無い。
そのためにタイトなテイクオフゾーンで、自分の居場所を見つけ、そして波が万が一自分のところに回ってきたら、確実に波をとらなければならない。自分のところに波が来て、確実に波を取らなければならない理由とは、周りのサーファーが常に波に乗る人を見ていて、その人のレベルをチェックしているからだ。つまり、波に乗れないサーファーだと周囲に判断されると、決まって前乗りされたり、ポジション取りでかなり不利になる。
そうここでは、実力と最初のライディングがとても肝心。
“あいつはサーフィン技術がこのポイントにふさわしく、波に乗れる”
ということを、まずは証明する必要があるのだ。
そんな中、昔は浮力が無いレールの薄めのペラペラボードで、とても苦労をした記憶がある。自分のポジションをベストに取って、しかも回りにサーファーがいない空いている状態であれば、問題なく乗れる。でも、混雑している海で、自分の思い通りにするのはやっぱり無理がある。
技術も足りなかった自分には、なにか優れたサーフボードが必要だったのだろう。
良いボードが無い時なんだけど、たいてい1時間もサーフィンして、波に2本とかしか乗れなかったり、インサイドに行けば、決まって弱めの波でボードが走らないので、つまらないという経験を数多くした。
だから、このポイントで俺が楽しむには
- 通常のボードでは無理目な波でも、テイクオフが可能なボード
- ビハインドピークに万が一なってしまっても、走り出しが早く、セクションを抜けられるボード
- 無理やりインサイドの小さめの波に乗せられても、スピードが高くて、小波でも楽しめるボード
というのが自分のボードに要求することだった。今まではその要求を満足に満たしてくれるボードは無い。さてこのFF−JのXTR素材とシェイプはどうだろう?デザインも、短め・幅広なデザインで、今まで乗ったことも無いタイプだし、素材も新しい・・・期待に胸を含まらせながらのパドルアウトとなった。
パドルをまずしてみる。今までのボードよりも浮力は多少多いようだ。ただ、短さゆえか、長いタイプのボードにありがちな超安定というフィーリングは無く、パドルからもわかる動きの期待感が持てた。
ピークに向かうと、いるいるいつものメンバーが。いつものメンバーとは、このポイントブレイクに毎日通っていると思われるローカルグループ+プロ数名。俺はこのブレイクに通ってまだ2年だから、ローカル扱いはされない。

ピークは5人もいれば、波はほとんど回ってこないので、ピークからほんの少し(3mくらい)インサイドで、波を待つ。セットの波ではなく、セットの間のミドル系の波で攻めようという作戦だ。
そうしていると、セットを待っているサーファー軍団が見送った、ミドルサイズの波が丁度俺のところに入ってきた。
ボードがスーっと走り出す。滑らかかつ、しかも早いテイクオフ。今までのボードだと、一生懸命バシバシパドルをしている局面でも、落ち着いてパドルをしてテイクオフに持っていける。
なんだろう?素材が違うから、浮力感がパドルからテイクオフする際にも感じられる。
この時の驚きの感触がまず俺は今でも忘れられない。
サーフィンをやられている皆さんは、分かると思うが、このスムーズなテイクオフと言うのはとても重要で、テイクオフに余裕が生まれるのだ。余裕があるから
“次のボトムターンはどこでしよう”
とか
“どうやって波にアプローチしよう”

ということを考えることができて、ライディングに乱れが無い。テイクオフがスムーズで無いボードは、テイクオフだけに労力を使ってしまって、上級者やプロは別として、われわれ中級レベルだと、落ち着きの無いライドから始まってしまうのだ。
FF-Jはそんな落ち着きの無さも感じさせない、余裕あるテイクオフとそして走り出しからのスピード。そんな乗り味が印象的だ。
さて、テイクオフをして、アップ&ダウンを2回ほどしてスピードをつける。このアップ&ダウンでの走りにもFF-JのXTR素材バーションは注目したい。
とにかく、そのアップ&ダウンが軽快なのだ。その軽快さとスピードの高さがとても心地良く、どこまでもアップ&ダウンをして走りまくりたくなる。
アップ&ダウンのスピード感。サーフィンをやっていて、横に走れるサーファーであれば誰でも病みつきになるあの感じ・・・そのスピードをFF-J、XTRサーフボードは味あわせてくれる。しかも全体的にサーフボードの取り回しの重く無い。とても軽いのでレールToレールにも持っていきやすい。
 
そう、すでに最初の一発のアップ&ダウンで、このサーフボードデザイン&素材のマジック度が分かってしまった。
あるお客様は、
”走り出してからのスピードのつけやすさが抜群“
またあるお客様は
“通常のボードだと失速してしまう局面でも、スピードのロスが無い”
とも表現してくださるように、このボード本当に安定してスピードが出るのだ。
さあ、アップ&ダウンだけでなく、縦へのアプローチはどうだろう?と言うことにもなる。アップス&ダウンを2回ほどして、ボトムに降りる。縦へのアプローチが狙える。レギュラーの波であったから、右手で水をちょっとさわり、ボトムターンをする。
ボトムでボードをためると、ボード全体に力がたまり、ひねり出すようなスピード。今ならもう馴染み深いXTRサーフボードの特性。
PU(ポリ)と比べると最初は”ちょっと硬いかな?“というフィーリングに感じるのだが、それが慣れてしまうと、
”XTRのギュルギュルとヒネリ出るスピード感に夢中・病み付き“
となる。
 
ボトムターンをして、波のショールダーに少し出たので、タイトなカットバックをするために、トップで板をリエントリーする。
カットバックの際に、スピードが保てるので、レールが引っかからない。
“凄いこのボード・・・カットバックのイージーさは今まで味わったことの無いレベル”
そして、ホワイトウオーターに当てる。
パコーンと音が聞こえそうなくらいにキレ良く当て込みが出来た。
そのリエントリーが終わり、また1〜2回アップス&ダウンをして、今度はトップの崩れそうな波に当てる。
その反発でボトムに降り、素晴らしいスピードをつけたままインサイドへ。そして、最後はローリングでこのライドを終えた。
最初の波で、ボードに虜になる。その後は、早めのテイクオフと、そのひねり出すようなスピードを何度も楽しみつつ、ボードの感触を確かめた。
最初は浮力が多いと感じたが、慣れればその浮力がアドバンテージとして感じられる。浮力が多めだからって、動きが出せないという訳でない事が、初めて自分で体感できたようだ。
逆のこのボードのほうが、レールでのターンを意識出来るので、コチョコチョと格好の悪いサーフィンにならないトレーニングも出来ると強く思った。
サーフィンは、レールをしっかりと使って、体重をかけたターンが基本。そんな基本に忠実になれるボードでもある。
それからというもの、FF-Jの虜になってしまったようで、サーフィンをする際には、かならず車の中に入れるようになった。膝でも乗れて、頭+サイズでも活躍する。そんなボードに夢中になった。
俺の住んでいる場所の南のポイントブレイクから、北にあるサンドビーチまで・・・ありとあらゆる所にボードを共にしてきた。
そして、5年たった今でも、このFF-Jは俺の手元にある。しかも乗り味もほとんど新品の時と同じような感じで、
まだボードが
”生きている“
フィーリングを与えてくれる。しかもデッキは足を置く場所はさすがに凹んでいるが、大切なボードのボトムは修理箇所1つのみ。5年も経っているのにね。PU素材だったらそんなことありえないと思う。
それだけ、XTR素材の耐久性があるということだろう。
さて、FF-Jはカリフォルニアの波で様々活躍することが証明された。果たして日本では?ということになるだろう。
カリフォルニアに長年住んでいないとなかなかイメージがつかめないだが(実際筆者も同じだった)、通常カリフォルニアの波はAUSやハワイ、そして南米のチリ、ペルーより波が弱め。パキパキの波が割れる!と思っている人には少しがっかりだが、冬の北エリア以外はそれほど波のパワーが強いとも思えないし、世界を旅した経験豊富なシェイパーやサーファーに言わせると
“カリフォルニアの波はソフト(弱い)だ”
となるのだ。あの有名なTrestlesの波だって、プロは
”波がソフト・斜面が緩い”
というくらい。
となると、AUSのパキパキのパワーのある波より、カリフォルニアのソフトな波のほうが日本の平均コンデションにより近い。
ここで、カリフォルニアで7年間サーフィンを、ほぼ毎日といってよいほどしていた筆者が感じているカリフォルニアの波と、日本の波の差も経験で挙げてみよう。
それは
”カリフォルニアの波のほうが、概して波に長く乗れる”
”日本の波のほうがピークから、サイズが下がってしまう速度が速い”
ということだ。それ以外は、それほど波の質は変わらないように感じる。
ただ、波が出る確率はカリフォルニアのほうが高いし、ポイントブレイクも多く、様々なタイプの波があるのもカリフォルニアの特徴と言えるだろう。
さあ、前置きが長くなった。FF-Jと日本の波の相性だったね。筆者がほぼ毎日FF-Jを3ヶ月間使った感想だと、
”FF-Jは日本の波にピッタリとフィットする”
と言うことだろう。もともと、FF-Jはノーズロッカーは弱く、弱くそして、緩い斜面を持つ波にロッカーがフィットする。しかも短いので、フェイスが浅い波でも、動きが軽快だ。
このFF-Jは皆さんが思っているような
”小波専用”
では無く、頭以上の波でも使えるのが特徴。実際に膝の弱めの波から、チューブを巻くような頭サイズまで様々な波で試した。掘れた波の時は、それなりに乗り方や扱い方を帰る必要があるが(というのはスピードが高いのと、エントリーロッカーが弱いので、テイクオフ後のノーズの刺さりに気をつける必要がある)、どんな波でも対応できるという応用力の広いボード。
 
筆者がテストメインでテストして使ったポイントは主に3ポイント。どのポイントも波質が幾分異なる。
- トロ早い感じの波。ここは、テイクオフしてからのスピード・走り出しが良いボードで無いと、楽しめない。
- ちょっとだけ波にパワーがある、掘れて早い波。この波はテイクオフはイージーだが、ボードのコントロール性が求められる。
- テイクオフがちょっと掘れているのだが、テイクオフするとダラーっと割れる。そしてインサイドでまた掘れてきて、ドカーンとなる波。
そんな波質で、何度も何度もボードのテイクオフ・走り出し・走り出しからのアップ&ダウン。ボトムターン&トップターンなどなどすべて試してみた。
 
そしてFF-Jの対応幅の広さに更なる確信が生まれる。そんな多くのテストで、このボードは、
”新しいタイプのオールラウンドモダンフィッシュ”
という位置付けが一番しっくりくる。
ちなみに、レトロチックなツインフィンやクワッドもお持ちの方もいるだろう。そういった、レトロフィッシュに乗ると、いきなりのギャップに苦しむ人も多いことだと思う。これにはれっきとした理由があって、カリフォルニア発祥のレトロフィッシュは、もともとポイントブレイクのサンセットクリフのリーフ、そしてLa Jollaのウンダンシーなどの、サンデイエゴエリアの質の高い波で、波にちょっとパワーがあって、そして規則的に割れる波にあわせてある。そういった波で開発されたボードだから、そうなってしかるべきなのだ。
だから、カリフォルニア発におトラディショナルなレトロツインに乗っている人は分かるだろうが、波も適度に掘れていて、規則的でないと意外とテイクオフからのスピード走り出しを付けにくいと感じている人も多いのではないだろうか。
特に日本の多くのサーファーが乗る、ビーチブレイクでは思ったより苦戦するはずだ。
このFF-Jは、そういったレトロツインのネガティブな面をすべて解消し、動きを軽快にし、縦へ持って行けるモダンフィッシュなのだ。
ボードも小波系だと思っていて、あまり頭サイズとかに使っていなかった。でも、日本に来て、何回も上のポイントで頭以上のサイズで使っているうちに、ボードの懐の深さが良く分かるようになってきたのだ。
”頭以上でもきちんとしたコントロールをレールですることができれば、素晴らしい性能を発揮する!”
と。
素早い走り出しとテイクオフから、スピード溢れるボトムターン。そしてトップターンでもレールが引っかかって失速しないその性能は、どのレベルのサーファーが乗っても必ず楽しめるボード。
日本の平均的コンデションで、是非このマジックボードFF-Jを試して欲しい。


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